【連載】企業革新戦略−上昇志向の企業革新−

■「業態転換」「新規事業」で経営危機を乗り越える

◆逆境に異を唱え主導権を取り戻せ

今、日本経済は、未曾有のデフレ不況に苦しめられています。その上、技術革新や流行など、経営を取り巻く環境が変化するスピードはますます速く、激しくなっています。常に経営革新を図ってそれらの変化に対応していかなければ、企業はどんどん取り残されて敗退してしまうでしょう。
(中略)
経営革新を図ろうとする場合、「画期的な新商品さえ開発できれば成功する」と思われがちです。画期的な商品を開発すること自体は素晴らしいのですが、それを買ってくれるマーケットの存在可能性、売るための仕組みや組織体制にまで思いが至らないケースが多いのです。その結果、従来の考え方から脱しきれずに中途半端に終わってしまうのが実情でしょう。
では、どう考えて、どう実行に移していけばよいのでしょうか。

◆「市場」「商品」「組織」の3つを同時に用意すること

まず、マーケットに対する認識を改めるべきです。そしてどんな商品なら受け入れられて、そのマーケットに受け入れられるのか。そのマーケットに対応するためには販売体制・組織をどう変えたら良いのか、というように「市場」「商品」「組織」の3要素を常にセットで考え、答えを用意していかなければなりません。新商品を新市場で売るには、新たな組織や拠点が必要になる場合もあるでしょう。例えば商品特性によっては、従来の販売チャネルを使うのではなく、新たな代理店の活用やフランチャイズ方式での展開、営業専門会社への業務委託などいろいろな手法を柔軟に検討すべきでしょう。

既存事業が厳しくなると、新商品や新サービスを開発して、その売り上げで前年比何%アップを達成する、といった表面的な業績に目を奪われがちです。しかし、実際にはそれを実現させてくれる大切な顧客、従業員、仕入先や販売店などのパートナーにこそ目を配り常に手入れをしておかないと、思ったような結果は得られないでしょう。どんなに画期的な商品でもいずれは寿命が来てしまいます。その時に、次の商品を生み出すためにはこれらの人々の力が何よりも必要なのですから。

なぜここで「人」にこだわるのか。それは、人にしか持ち得ないナレッジ、つまり知的資本がこれからの企業経営にとって極めて重要だからです。顧客や従業員、取引先の声を常に汲み取れる仕組みを作っておけば、最良のアイディアや考え方、方法論が経営者にもたらされるでしょう。このような声を集め、分析し、企業全体で共有することで、常に新事業のアイディアやヒントが発見されるデータベースとなります。このような仕組みを作って初めて、顧客から受け入れられる新たな商品を、常に効率的にマーケットに流通させられる仕組みが完成されるのです。

しかし、多くの経営者は自らこの仕組みづくりにタッチせず、社内外の誰かに委ねてしまいがちです。すると途端に市場ニーズがわからなくなる。そればかりか自社が環境変化にどう対応していけばよいのかという組織運営の方向性さえ見失ってしまうことになります。企業経営者に求められるリーダーシップとは、決してカリスマ性だけではありません。企業を適切に牽引していく能力もその重要な部分です。経営者たるもの、企業に利益をもたらす源泉とも言い得るこの仕組みを自ら率先垂範して整備・拡充させていく必要があります。
(中略)

◆自社の「真の顧客」「提供する価値」「コア・コンピタンス」を整理

業態転換や新規事業を考える前に、改めて自社の本業を見つめなおしてみましょう。その際のポイントは3つです。

まず、自社の真の顧客は誰か。真の顧客は納入先である商社や代理店、スーパーマーケットやコンビニエンスストアチェーンなどではありません。本当の顧客はその商品を「消費」する人、あるいは実際に「使用」する人です。企業は、このエンドユーザが喜ぶ商品・サービスを用意しなければなりません。当たり前の事のようですが、実際には流通業者などを重視するあまり、この「真の顧客」を軽視してしまっている企業は数多く見受けられます。
次に、自社が真の顧客に提供している価値は何か。顧客のコスト削減なのか、新たなライフスタイルの提供なのか。商品やサービスによって実現されている価値は何なのでしょうか。このコンセプトを明確化して絞り込む必要があります。
そして最後に、真の顧客に価値を提供できているコア・コンピタンス(中核的な能力)は何なのでしょうか。独自技術なのかマーケティング能力なのか、あるいは品質管理能力なのか。自社が旗印として掲げられる能力は何かを検討してみてください。

事業の革新はこの3つの条件が交わった領域で検討すべきです。この3つの軸が認識できていないと目の前にあるチャンスにも気づかないまま終わってしまいかねません。
自社が得意としている部分を検討せずに、苦し紛れに流行っている事業に手を出したところで、まず失敗に終わってしまいます。

◆何よりも重要なのは経営者の意識を変えること

最後に、経営危機を脱して業績を回復させるために何よりも重要なことは、まず経営者の意識を変えることである、と指摘しておきます。経営には社内外の情報収集は欠かせませんが、ではそれを経営者が自ら行なっているでしょうか。
例えば、経営者自ら毎日のように現場を歩いていますか。営業担当と同行し、直接顧客の声を聞いているでしょうか。顧客に商品が納入されている現場をその目で確かめたでしょうか。市場や経営環境は刻々と変化しています。そしてその変化は必ず現場にあるのです。これらのことを実践することなく、ただ不調を嘆いている経営者が企業を変えることなどできるはずもありません。

顧客は常に不満を持ち、問題を抱えているものです。足を運んで耳を澄ませば、その声が聞こえてくるはずです。それを吸収し、解決してあげられる商品やサービスを提供できれば、顧客からは必ず支持されるはずなのです。(談)