【連載】企業革新戦略−上昇志向の企業革新−

■第4回:マーケティングへの革新(1)

◆はじめに

企業活動を極言すると、製品やサービスを顧客に提供することによって資金の流れを作り、次の活動へと再投資していくということになります。この顧客への提供の部分がいわゆるマーケティング活動になります。マーケティングという言葉は今や一般化していますが、ともするとセリング活動と同一視されてしまいがちです。

◆セリングとマーケティングの違い
図1:セリングとマーケティングの違い

図1にセリングとマーケティングの大まかな違いを示しました。セリングとは、図にあるように「今日の糧」を得ることを目的とした活動です。一方、マーケティングとは「明日の糧」を得るための活動になります。言い換えれば、セリングとは売上予算消化のための日常業務であり、マーケティングは将来的な戦略の立案と実行であるともいえます。企業が革新を図ろうとする動機は、将来的な事業拡大・成長あるいは高収益化などを実現しようとするからに他なりません。ここから、自社の営業活動の根幹をセリング主体からマーケティング主体に革新させていく必要があります。

セリングとマーケティングの最大の違いは、その活動の起点にあります。セリングは自社の製品やサービスという「既存商品」をその起点とします。つまり、年度の売上予算に基づいて製造される製品や事業維持のために最低限提供しなければならないサービスを、いかに効率的に売り込んでいくかという営業部門の短期的活動が主体となります。

一方、マーケティングはその起点を「顧客」に置きます。このコラムの第1回で検討した自社の「本当の顧客」をいかに発見し、開拓し、お得意様として維持していくかを最重要課題としてとらえます。これは自社の将来的な発展を「良質の顧客層という収益基盤」の戦略的構築によって形成しようとする活動となります。そして、その活動の対象は営業部門だけに止まらず、生産部門や商品企画部門、原材料の購買部門や物流部門、あるいは顧客管理のための総務などのバックオフィス部門など、ほぼ全社的な範囲に及びます。

マーケティングへと革新するということは、自社の企業活動を、自社が現在保有している商品やサービスの販売主体の考え方から、自社が保有している能力や提供価値に基づいた良質な顧客の獲得へと転換するということになります。では、このような転換を図るためには、なにをどのように検討していけばよいのでしょうか。

◆4つの切り口で検討する−マーケティング4P−
図2:マーケティング4P

自社の今後のマーケティングの方向性を検討する上で便利なフレームとして、「4P」という考え方があります。これはマーケティング上必要とされる要素を図2の「商品」「価格」「チャネル」「プロモーション」という4つに分類して検討していくという方法です。
自社の事業活動を顧客の視点に基づいてこの4つの切り口で検討し、新たに構築しなければいけない社内の仕組みや活動を洗い出していきます。

【1.商品:顧客にどのような商品・サービスを提供していくか】
自社にとっての本当の顧客(あるいは見込み客)が提供してもらいたいと考えているであろう価値を、自社は今後どのような商品・サービスを通じて提供していくのかを考えます。そしてそのような商品やサービスは、顧客から見てライバルの提供するものとどのような差別化要素を持っているか、その差別化を実現するために使われる自社のノウハウや能力とは何なのか、それはどの部門が保有するものであるのかを検討していくことで、強い商品・サービスを生み出す自社の仕組みを考えていきます。

【2.価格:顧客にどのような価格で提供していくか】
自社が対象とする顧客は、自社が提供する商品やサービスの価値として、いくらぐらいの価格を認めてくれそうなのかを検討します。これを知るためには当然、テスト販売やアンケートなどを行なう必要があります。場合によっては自社の従来の価格設定の考え方も見直す必要も生じるでしょう。仕入に関する方針や生産部門の効率化なども必要となるかもしれません。自社の現状でのコストを中心で考えていくと、顧客に対する新たな価値観の提供の機会を逸してしまうかもしれません。革新を目指すならば、現状での社内での常識を一度捨てて、顧客の視点での価格検討を行なってみてください。

【3.チャネル:顧客にどのようなチャネルで提供していくか】
顧客に対してどのような流通経路を通じて、商品やサービスを提供していくのかを考えます。この際に重要なのは、自社が提供しやすいチャネルという考え方から、顧客が入手しやすいチャネル、あるいは入手したいと考えるチャネルはどれかという考え方に変更する必要があるということです。例えば高価なブランド品のバッグを直営店で誰よりも早く確実に手に入れたいと考える顧客もいれば、少しぐらい遅くとも安い並行輸入店やリサイクルショップで手に入れようとする顧客もいます。産業用機器でもメーカーから直接購入したいと考える顧客もいれば、顧客が親しく取引している専門商社を通じて購入したいと考える場合もあります。自社が対象とする顧客のプロフィールや購買基準に合致したチャネルはどれなのかを検討し、それに自社のチャネル政策を変更していく必要があります。

【4.プロモーション:顧客にどのようなプロモーションで知ってもらうか】
どんなに素晴らしい商品やサービスを提供しているとしても、顧客にその存在を知ってもらわなければ、顧客は購入することができません。この点からプロモーションはマーケティングの非常に重要な要素となります。プロモーションはその性格から、広く一般に働きかけるものと、個別のターゲット顧客に働きかけるものに分けられます。前者の代表が広告・宣伝となり、後者の代表が人的販売(=セリング活動)になります。顧客の購買決定活動には、広く関連情報を集めようとする時期と、個別商品の比較検討に入り購入を決定しようとする時期があります。一般に関連情報を集めようとする時期には広告宣伝やパブリシティ(メディアでの報道など)が有効です。一方、いざ購入しようとするときにはセールスマンの勧めや、小売店での推奨などが効いてきます。つまり商品やサービスがどの程度顧客に認知されているかで、プロモーションの方法は変わってきます。どのような計画で誰に対してプロモーションを行なうべきか、現状のプロモーションの有効性はどうかなど、もう一度見直してみてください。

今回はマーケティングに関しての全社的な着眼点を解説しました。次回は営業部門の活動へのより具体的な反映手法を「マーケティングへの革新(2)」として紹介いたします。