【連載】企業革新戦略−上昇志向の企業革新−

■第5回:マーケティングへの革新(2)

◆はじめに

前回は全社的な観点でのマーケティングを解説しました。今回は、より具体的に営業部門での活動方針の革新という視点で検討してみたいと思います。

◆マーケティング目標の変化への対応

書店の書棚などを見ると『提案営業』『顧客との関係強化』などのタイトルのビジネス書が並んでいます。中身を見れば、まるで提案営業以外の営業手法は間違いである、あるいは顧客との関係強化や維持がこれからの営業のすべてであるかのように書かれています。もちろん提案営業や関係強化・維持も確かにマーケティング上での重要な要素であることは事実です。しかし、実際には企業の事業活動の根幹を支えるマーケティング活動が、そのような単純かつ画一的な活動のみで遂行されるわけではありません。

前回も解説したとおり、マーケティングとは『明日の糧』を得るための、戦略的な活動です。つまり、マーケティングは企業の中長期の事業戦略に則って計画・検討され、実施されていくものです。ルーティン化されたセリング活動での手法と、企業を発展させるマーケティング活動とは区別して考える必要があります。

マーケティング活動の最大の目的は、販売ではなく『顧客の創造と維持』です。営業部門の活動をこの目的のために整理すると、(1)新規開拓、(2)関係強化、(3)提案営業、(4)関係維持という4段階に大別されます。当社のクライアント企業から「営業力が弱くて...」とご相談を受ける場合によく見受けられるのが、この4段階の活動を戦略も方針もなく漫然と営業担当者任せで行なっているという状況です。

それではこの4つの段階において、それぞれのマーケティング目標は何かを整理し、営業部門の活動体制をどのように変化させていけばよいかを考えていきます。

◆マーケティング活動の4段階での変化
図1:営業活動の4つの段階

【1.新規開拓】
新規開拓活動でのマーケティング目標は、いかに短期間で効率良く市場に浸透し顧客を獲得するか、つまり将来の収益基盤となる『顧客数の量的拡大』になります。この目標を十分理解していないと、開拓活動の際にクロージングに長い時間を要する商品を使ったり、個別のカスタマイズが必要となる商材を選んでしまうことで、時間を浪費し成果も上がらない状態になります。

新規開拓の目標は顧客の量的拡大です。また、新規開拓とは基本的には確率の問題になります。つまりいかに多くの見込み客に効率的にアプローチするかが成否の分かれ目になります。ここから商材は新製品、パッケージ化された提案やサービス、標準品というようなセールス活動やセールストークが比較的マニュアル化しやすいものを使って行なうべきです。また活動体制は営業管理職の指示の下、事前準備した見込み客リストなどに基づき、日時・期間を定めて営業担当者全員で一斉にローラー作戦で行なうべきです。担当者の自由裁量に任せてしまうと、新規開拓は通常後回しになってしまいます。

【2.関係強化】
新規開拓によって獲得した顧客との関係を強化し、継続的取引が実現できるようにする段階です。この段階では『顧客ごとの取引の量的拡大』を目標とします。つまり新製品や標準品などによる単品・単発商談的が中心であったものを、大型商談・継続商談にしていくわけです。大型商談にしていくということは取引金額を大きくしていくことになりますし、継続商談にしていくということは顧客の業務プロセスや生活スタイルに自社の商品やサービスを不可欠なものとして組み込んでもらうということになります。これを実現するためには、個別の顧客に対しての詳細な情報と過去の取引履歴の分析などが不可欠になります。つまり、お客様のことをどのライバルよりも良く知っていることが求められます。

活動推進体制は、営業担当者の顧客から会社としての顧客への転換を目指すという点と、商談の大規模化などによる判断業務範囲の高度さが要求される点から、営業担当者単独から上席者(マネージャー、事業部長あるいは役員・経営者)を巻き込んだ縦方向でのチーム営業となっていきます。

【3.提案営業】
提案営業とはよく使われる言葉です。その意味は特定の顧客が抱える何らかの問題を解決する方策を、自社が中心となって提供するというものです。つまり、顧客の業務プロセスや生活スタイルへの組み込みが完了した関係強化段階からさらに一歩進んで、顧客の特定の問題を専従的に解決する、あるいは共同でなんらかの解決法を生み出していくということです。ですから、この段階では『顧客ごとの取引の質的拡大』が目標になります。

この段階に入ると、案件は個別顧客ごとに異なり、営業部門が保有している標準的な商品やサービスだけでは解決できなくなります。このため、社内の開発部門や生産部門など他部門を巻き込んだ横の方向でのチーム体制が必要となります。営業部門の役割は全体のコーディネートが主体となります。また、案件ごとの進捗管理と予算管理が重要な命題となってきます。

【4.関係維持】
(1)から(3)の段階を経て構築された顧客との質量両面での関係を継続することが主眼となる段階です。必要とされるのは、いかに計画的に関係を維持していくかという会社としての仕組みになります。絶対に避けなければならないのが、せっかく会社全体の顧客として育て上げた顧客を営業担当者の顧客に戻してしまうことです。営業部門では新規開拓から関係維持までの活動サイクルが常に回っています。このような状況で、担当者個人に顧客の維持・管理を任せてしまうと、担当者の繁閑の度合いによって顧客との関係が薄まる、あるいは完全に途絶えてしまうような事態が発生します。

そうならないためにはまず、メンテナンスに関してはメンテナンス部門に、継続取引の業務処理に関してはバックオフィス部門に、というように自社の業務プロセスに組み込んでしまうことで、顧客との接点を多重化することが求められます。また営業部門においても顧客との定期的な接触が絶えないようにし、リピートオーダーが確実に受注できるようにする必要があります。このためには管理担当者のための活動管理の仕組み(営業日報の義務化、活動予定表の厳格化など)が重要になってきます。

今回は営業部門を中心に検討しました。しかし企業は営業だけで運営されているわけではありません。次回は会社全体という組織の革新について検討していきます。