【連載】企業革新戦略−上昇志向の企業革新−

■第11回:外部資源を活用する

◆はじめに

企業の革新のための戦略として最もオーソドックスなものは、競合他社との差別化もしくは製品コストの低減化です。このどちらの戦略を採る場合でも、自社の提供価値を産み出している独自能力に経営資源を集中させていく必要があります。しかし中小企業においては設備や人員など保有する経営資源には限界があり、独自能力に経営資源を集中させると他の経営上の機能が弱体化してしまいます。
これを解決する手段として、外部資源を有効活用することが考えられます。今回は特にアウトソーシングと共同研究について検討していきます。

◆アウトソーシングの検討には定量的観点を持つ

生産や営業、あるいは総務など特定の業務範囲に特化した業者に業務委託することをアウトソーシングといいます。正確な定義は無いのですが、外注よりは広い範囲での委託であり、かつ委託した業務に関しての進行方法などは相手先に大部分を任せてしまう契約形態だと思っていただければ結構です。このような専門事業者が有する特定業務に関する専門性を上手く活用することで、経営のパフォーマンスを向上させていくことが可能となります。しかし、現実には思ったほどのパフォーマンスが上がらないケースも多いようです。その原因は何でしょうか。

アウトソーシングとは、あくまでも自社の経営上の機能を補完するものであるということを認識する必要があります。言い換えれば、自社の戦略に基づく業績目標を達成する手段としてアウトソーシングを採用するわけです。契約形態が一括請負型であろうと成功報酬型であろうと、委託した業務の成果は最終的に自社の業績へすべて影響してきます。

例えば皆さんが外注という形で生産を委託する場合、自社の売上高目標と自社の生産能力を前提とし、総利益率(粗利率)や目標製造原価率を検討した上で、外注先に関する生産性や条件決定を行い契約交渉に入るはずです。アウトソーシングに関しても外注先を選定する場合と同様に、その委託業務について自社の業績目標から算定した業務内容の定量的な判断が必要不可欠となります。

自社が不得意な部分なので専門業者に任せてしまおう・・・などといった観点からアウトソーシングを行うと、目標とする成果や業務効率についての判断基準が曖昧になるため、費用対効果についての正確な評価ができない、あるいは委託した業務が契約どおり進捗しているかなどの管理面での判断が困難になってしまいます。
アウトソーシングは、優秀だから任せてしまえば大丈夫といった類のものではありません。必ず期待する成果や効率を、自社で事前に定量的に規定した上でうまく活用してください。

表1:アウトソーシングの種類
分類主な内容
総務・経理総務購買業務代行・出張関連業務代行・ファイリング
経理出納業務代行・貴重・月次決算代行・資産管理
福利厚生保険・年金サービス・旅行サービス・リロケーション
人事・人材人事関連業務人事管理・給与計算・人事精度策定・社会保険関連業務代行
人材供給採用代行・アウトプレイスメント
人材教育社員研修・人材開発
経営・情報経営管理財務分析・企業戦略立案・事業計画策定
情報システムシステム企画・設計・運営・保守点検・情報処理
情報提供データーベース提供・情報検索・海外情報サービス
営業・販売・マーケティング販売業務代行・広告代理・テレマーケティング・DM
製造関連開発・設計・部材調達・生産工程の請負
物流関連受発注管理・実地棚卸・文章保管・配送・在庫管理
施設管理セキュリティー・オフィス環境整備・ファシリティーマネジメント
その他イベント企画・運営・産業廃棄物処理・ATMの設置・運営代行
◆大学などとの共同研究を上手く進めるためには
図1:TLO(=技術移転機関)

先進性や革新性を持った新商品開発などを行う際に、大学等の先生方との共同研究を行うことも有効な手段です。

従来は非常に敷居が高いイメージのあった大学も、独立行政法人化により各大学が具体的な成果を求められるようになるため、TLO(=技術移転機関)を設置し大学や大学教官が保有する特許権や技術シーズを民間移転するなど、中小企業との共同研究や共同開発に対して非常に前向きに対応してくれるようになっています。

では実際に大学との連携を行なう際にはどのような点に留意すべきでしょうか。


【1. 先生や大学はどう探せばよいか】
なんとなく良さそうな研究は無いかと漫然と探していても決して見つかりません。まず自社が何に関してどのようなテーマを持っているのかを整理する必要があります。テーマが明確になったら、人脈を有効利用したり、インターネットや学会誌などの媒体から探索していきます。大学によっては共同研究センターなどを備えて、学内の研究者や成果を公表しているところもありますので利用しましょう。展示会や産学交流会に参加してみるのも良いでしょう。

【2. 先生や大学にアプローチする際の留意点】
相談内容は具体的かつ明確にしておく必要があります。テーマと求めている成果、現状での問題点、大学に期待している分野は文書化してからアプローチします。その際に忘れてはならないのは、先生のおかれている立場は企業とは異なるということです。先生方の本業は教育と研究であり、企業の支援機関ではないことに十分配慮してください。

【3. 信頼関係の築き方】
すべての信頼関係はギブ・アンド・テイクで成り立ちます。一方的に先生方の成果を利用しようとすると、信頼関係は一瞬で壊れてしまいます。定期的かつ継続的な情報交換や進捗報告は当然として、業界情報や新製品・新技術情報の提供など先生方にとっても少しでも役に立つと思われるものは積極的に提供していきましょう。

【4. 共同研究などを実施する際のポイント】
事業化や商品化についての責任は、原則すべて企業が負います。つまりプロジェクトのマネジメントは企業が行わなければなりません。例えば研究成果に対するアプローチにおいて、企業は商品化が前提ですから80%の成果でよいと考えますが、先生方は100%の成果が出なければ次のステップに進みません。事業化・商品化に向けての進捗管理などは企業側が積極的に関与しなければ、タイミングを逸する可能性があります。また費用負担に関しても研究機関と企業とでは、コスト意識に大きな開きがあります。負担範囲などは明文化しておきましょう。さらには、成果に関する取り扱いについても必ず明文化しておく必要があります。特許などの帰属は当然定めるとして、成果の外部発表の可否あるいは発表のタイミングなどは特に定めておかなければ問題が生じます。特許申請前に論文発表等がなされると「周知の技術」として特許が認められなくなりかねません。

本連載もいよいよ次回が最終回となります。次回は、今後の企業革新の方向性を考える上で重要と思われる経営環境の変化について、その着眼点を紹介していきます。