【連載】営業強化戦略−勝ち続ける企業への変革−

■第2回:顧客開発を強化する(1) 既存顧客との関係強化

◆はじめに

営業部門のミッション(使命)は、企業運営の源泉である売上と利益を自社商品・サービスの販売(セリング)により生み出すことと、将来の受注の源泉となる顧客開発(マーケティング)です。この2つのミッションを踏まえた上で営業強化としてまず取組むべき課題を考えると、確実にニーズが存在し予算も有している既存顧客との取引深耕・関係強化になります。

◆関係強化対象とすべき優良な既存顧客とは

関係強化を図るべき優良な既存顧客とは、

  1. 購買余力があり、
  2. その顧客との取引では適正な利益が確保され、
  3. その顧客と取引をすることが業界における自社の評価や社内でのモチベーション(士気)向上につながる
ような相手先です。

営業担当者の効率的なミッション達成のためには(自社との関係が良好であっても)、購買余力がない相手先への必要以上のエネルギーの投下は避けなければなりません。

また相手先が大企業であっても、適正な利益を生まない取引しか行えないのであれば、見かけ上は魅力的であっても強化対象とすべきではありません。なぜならそのような大企業は、高圧的な値引要請やタイトな納期、長い支払サイト、保守契約の無償化要求など、対応に多くの設備や人員を投入したにもかかわらず、結果として利益を生まない取引しかできないからです。受注総額や相手先のネームバリューだけに惑わされないように。利益確保の視点が最も大事です。

◆関係強化は4段階で考える

さて、既存顧客との関係強化に向けた活動には大きく4つの段階があります。

表1:関係強化活動の4段階
 強化目標活動手法
受注維持販売実績の堅持による
売上/利益目標のベース構築
情報収集に基づく
活動計画作成と行動管理
受注量増加優良既存顧客内での
自社のシェア拡大
「縦のチーム営業」による
自社の存在感の拡大
受注品目拡大
(当面の最終目標)
優良既存顧客内での
新規開拓
「横のチーム営業」による
顕在化している顧客ニーズへの対応
新規分野開発
(理想的状況)
潜在ニーズの掘り起しによる
事業パートナー化
提案営業による
潜在的な顧客ニーズの解決

【受注維持】:実績堅持による売上/利益目標のベース構築

既存顧客への販売実績の堅持による売上高目標・利益目標の基盤作りが、関係強化の最初のステップです。定期的にリピートオーダーが舞い込んでくることは営業部門にとって最も効率的な活動であり、企業運営にとって最も望ましい状況のひとつです。

受注維持は一見容易そうに感じられます。しかし実際にはどのような企業でも、毎年平均15%から20%程度の既存顧客が離反していくといわれています。漫然とルートセールスや情報提供を行っているだけでは受注維持はできません。自社にとっての優良顧客は、ライバルにとってのターゲットであり必ず猛烈な営業攻勢がかけられています。ちょっとした油断やスキを見せると、たちまちライバルに奪われてしまいます。

受注維持のためには、

  1. 顧客の変化とライバル動向を見逃さないための「聴く・見る」ことを重視した情報収集の徹底
  2. 顧客の月間・年間スケジュール(業務プロセス、行事など)に応じたタイムリーなアプローチ(訪問や電話など)と商談
という2つの活動が重要です。このため営業担当の月間・年間ベースでの活動計画作成は、必要不可欠な行動です。

さらに重要なのが、営業管理者による適切な活動管理と時宜を得た指導・支援になります。特に日報や会議での報告内容については事実・推測・希望的観測を見極める必要があります。また、顧客情報の更新状況などにも注意を払いましょう。

なお、目標未達成を責めるトレース型の指導は、顧客に対する押し込み販売などを引き起こしやすいので避けるべきです。

【受注量増加】既存優良顧客内での自社シェアの拡大

受注維持が成功した優良顧客に対して行う次の取り組みは、現在採用されているカテゴリーでの製品・サービスの量的拡大になります。品目数の増加よりも量の拡大を目指す理由は、特定カテゴリーでの自社シェアを拡大することで、顧客にとっての自社の存在を「その他大勢」から「存在感のある相手先」と認めてもらうためです。関係強化の対象として選定した顧客には必ずライバルも納入しています。このライバルのシェアを奪取し、自社を顧客内でのシェアNo.1にするよう活動を行います。

受注量増加活動でのポイントは「縦のチーム営業」です。担当者単独での商談から管理職の同行、担当役員と相手先の上席者との面談、トップ同士での面談と職席上での縦方向への関係強化を図っていきます。

この目的は、

  1. より大きな決定権を有する顧客側のキーマンとの関係構築
  2. 自社が相手をいかに重要であると考えているかという意識付け
  3. 担当者同士での商談では発見できない大型商談の発掘
にあります。

特に(3)に関して、多くの担当者は「目先の商品・サービスを売り込む」という近視眼的な販売からなかなか脱却できず、顧客の将来戦略や環境変化に基づく商談大型化の可能性を見落としがちです。担当者育成の観点からも、同行・同席を基本とした縦のチーム営業を実行してください。

【受注品目拡大】既存優良顧客内での新規開拓(当面の最終目標)

縦のチーム営業によって顧客内での複数階層に対する接点が確立できたならば、次は受注品目の拡大を行っていきます。これまで自社が商談対象にしてきた以外のカテゴリーでの受注を図る活動であり、顧客内での新規開拓とでも呼べるものです。既存顧客との関係強化においては当面の最終目標になります。

ここまでの活動で、既に担当者は顧客側の購買担当者だけでなく、より上席者と面談できるようになっており、従来よりも広い視点での情報が収集可能となっています。工場や拠点拡大、新事業進出など顧客側の新しい動きはないか、ライバルでクレームは発生していないか、そしてそのニーズに自社製品やサービスがマッチしないか探索します。ポイントは「顕在化しているニーズ」であることです。この段階では自社の受注品目の拡大が目的ですから、顧客自身がはっきりとニーズを認識しており、かつ自社が即対応できるということが重要です。

担当者の活動ポイントは、

  1. 自社製品やサービス、導入事例などいわゆる「商品知識」の充実
  2. 情報収集範囲の拡大
  3. 自社の専門家(設計、企画、研究部門など)との「横のチーム営業」体制での対応
の3点です。

関係強化がこの段階に到ると、営業部門だけでは顧客側が示すニーズに対応可能かどうかが判断できなくなるケースが増えます。場合によっては自社製品の改良・改善、カスタマイズなども発生しますので、(3)の「横のチーム営業」が不可欠となってきます。

このような横のチーム営業を上手く機能させるためには、チーム構成員の役割分担と意思決定可能範囲の事前規定と情報共有化が必須条件です。営業部門担当者が顧客の要求仕様に勝手に合意する、開発担当者が納入価格を提示するというような意思決定可能範囲を超えた判断をすると、せっかくの新規商談がクレーム商談に変わってしまいます。

【新規分野開発】潜在ニーズの掘り起しによるパートナー化(理想的状況)

顧客との関係強化の最終段階は、顧客が気付いていないような潜在ニーズを解決することによって、双方の関係を「顧客−自社」という対立的な関係から「パートナー」という理想的な協働関係に変化させることです。この段階では、本当の意味での「提案営業」が必要とされます。提案営業の実施手法は大きなテーマですので、稿を改めて解説します。


次回は、「顧客開発を強化する(2)」として新規開拓能力の強化をテーマに検討します。