【連載】営業強化戦略−勝ち続ける企業への変革−

■第3回:顧客開発を強化する(2) 新規開拓能力の強化

◆はじめに

前回は売上・利益確保のための重要な課題として、既存顧客との関係強化について解説しました。
今回は営業のもうひとつのミッションである、「明日の糧づくり」としての新規開拓について考えていきます。

◆新規開拓の目的を間違えない

一般に新規開拓は既存顧客深耕の5倍のコストがかかるといわれます。これは、既存顧客に対する活動で挙げられる成果(売上や利益等)を新規顧客の開拓で達成しようとすると、5倍の手間と費用がかかるということです。
営業成果を売上や利益額といった販売面での指標だけで量ろうとするならば、営業の現場では新規開拓はコストパフォーマンスが悪いと敬遠されがちです。しかし、明日の糧づくりという観点から見るならば、まさに最優先の重要課題です。

統計的にはどのような企業でも、既存顧客の15%から20%が毎年何らかの理由で取引関係を解消していきます。近年は顧客側の選別基準が一層シビアになり、25%程度の顧客が他の企業に移るとさえ言われています。常に新規顧客の獲得を念頭に置いておかなければ、あっという間に自社の事業基盤は脆弱化してしまいます。

しかしながら、大多数の中小企業では新規開拓活動は組織的・継続的に行われていません。
例えば、新規開拓の基本である見込み客への訪問を行っている企業は実は全体の3分の1に満たず、ダイレクトメールも1割程度の企業しか発送していません。また、そのような活動の多くは担当者任せであり、企業全体の活動として取り組まれていません。
では、なぜこのような状態になってしまうのでしょうか。それは新規開拓の目的そのものを間違っているからです。

新規開拓活動の目的は、自社の将来の基盤となる顧客数の「量的な拡大」です。
営業部門に開拓活動を強化させたいならば、この「量=新規顧客数」そのものを成果としての評価対象としなければなりません。
しかし多くの企業では売上高が絶対的な成果指標であり、新規開拓数は補助的な評価項目でしかありません。担当者の意識が低いのではなく、経営者や管理職の課題認識が間違っているのです。
まず、新規開拓件数そのものを売上高や利益額と同レベルの重要な成果指標と位置づけてください。

その際に注意すべきなのは、あくまでも新規開拓「件数」に焦点をあわせるという点です。
多くの企業では新規開拓件数だけを評価せず、開拓による売上高の拡大や自社戦略商品の販売比率など、取引内容の量・質も同時に求めます。このような成果指標ですと担当者は新規開拓においても商談の大型化を目指してしまいます。これは実は商談の長期化やプロセスの複雑化を招き、開拓活動の効率を低下させ、開拓率の低下を招きます。最初の取引から大型商談になる可能性などほとんどありません。新規顧客は「明日の糧」です。将来、新規顧客の何%かがお得意様になれば良いのだと割り切るべきです。最初の商談があまりにも大口取引の場合などは、むしろ取り込み詐欺の可能性などに注意すべきです。

◆新規開拓はあくまでも確率の問題
図1:新規開拓の基本方程式

新規開拓活動の方法についても間違わないようにしなければなりません。提案型の営業手法は、既存顧客に対する深耕活動では威力を発揮しますが、顧客ニーズに対する深い理解に到っていない新規開拓には適しません。新規開拓にはむしろ、自社が自信を持って提供できる商品・サービスを中心としたプロダクト・アウト型の営業手法が適しています。
その理由は、効果的な新規開拓活動とは、どれだけ多くの見込み客に対し効率的にアプローチし、どれだけ短期間で効率的に商談を進めるか、そしてそれを実施し続けるかということであり、「見込み客数×アプローチ率×成約率×実施回数=新規顧客数」という確率論の問題であるからです。
ではこの方程式の要素をもう少し詳しく解説しましょう。

【第1の要素:見込み客数】
大前提として、見込み客の絶対数が少なければ顧客数は増えません。アプローチすべき見込み客のリストアップが、新規開拓の最初のステップです。このリストは(そのアプローチ状況や成約率などをマネジメント層が把握するためにも)各営業担当者に準備させるのではなく、企業あるいは営業部門全体として準備ならびに管理を行う必要があります。

【第2の要素:アプローチ率】
商談数を増加させる方法はただひとつ、どれだけの多くの見込み客にアプローチをするかということです。セールストークの巧拙よりも、絶対的な量を増やすことの方がはるかに重要です。「なにかのついでに訪問する」「空いた時間に電話する」というような場当たり的なアプローチでは目に見えるような活動成果は生まれてきません。
部門の営業活動計画に組み込み、定期的に一定の時間を割いて、組織として一斉に実行する必要があります。そのためには、管理者による部門の活動計画立案が不可欠な条件となります。

【第3の要素:成約率】
既に述べたように、新規顧客への商談では提案型の営業手法は使えません。成約率を向上させるためには、新規開拓に適した商品・サービスが必要とされます。定型的な商談パターンに持ち込め、誰でも特徴やライバル商材に対する優位性が説明可能な、次のようなタイプの商材を選択することが成功へのカギとなります。

【第4の要素:実施回数】
新規開拓活動はやり続けなければ意味がありません。Plan-Do-Check-ActionPDCAマネジメントサイクルに基づき、常に実施し続けることで活動の絶対量を増やす。これが結局は顧客数の増加、そして企業の発展につながっていきます。


来月号からは実際の商談現場を想定して、担当者の企画提案能力の強化について3回シリーズで述べていきます。