■プロジェクトチームの上手な作り方・運営の仕方

◆プロジェクトチームはなぜ失敗するのか

プロジェクトチームは、新事業への進出や新製品開発、新規販路の開拓など、企業が新たな取り組みを行おうとする際に発足されるケースがほとんどです。しかしながら(企業規模の大小を問わず)多くのプロジェクトチームは成果を生み出すことができないまま自然消滅あるいは中止に追い込まれていきます。

通常プロジェクトチームといえば、経営者等のトップマネジメントからの発案により組成され、メンバーには各部門のエース級の人材が投入されます。にもかかわらず、なぜこのような現象が起こり続けるのでしょうか。
失敗原因を考える上での参考として、典型的な失敗パターンを3つほど挙げてみます。

【Pattern1. 実効性のない内容に終始するパターン】
プロジェクトチームから出される計画や案件が、机上の空論や現状分析ばかりに終始し、具体的なプロジェクト推進計画を社内に提示できずに終わるパターン

【Pattern2. プロジェクトチームのミーティングが単なる定例会議になってしまうパターン】
プロジェクトといいながら毎回単なる意見交換の会議に終始してしまい、具体的な進展がないパターン。あるいは具体性のない抽象的な基本計画だけは示されるが、その実現方法や優先順位などは誰からも出てこないパターン

【Pattern2. 社内の利害対立の場となり空中分解するパターン】
プロジェクトチームのメンバーが、各々が所属する部門・部署の既得権益の確保に走るパターン。あるいはプロジェクトチームから提示された計画が各部門の責任者の対立を引き起こし、結果としてプロジェクトが破綻するパターン

【1】と【2】のパターンに共通しているのが、活動目的が不明確でありチームから出てくる内容に具体性がないという点です。
【3】に関しては、プロジェクトチームに課せられた課題の重要性についての理解がチームあるいは社内に浸透していないのではないかと考えられます。

さて、プロジェクトチームがこのような機能不全に陥る大きな原因のひとつとして、プロジェクトチームそのものに関して間違ったイメージが流布している点があります。
プロジェクトチームというと、若手の優秀なスタッフを各部門から集め、ブレインストーミングなどの手法により従来の組織では思いつかなかったようなアイディアや発想を魔法のように生み出す場というイメージがないでしょうか。
実はこのようなイメージが強すぎるため、せっかくチームのメンバーを集結させても、なんとなく焦点の定まらない議論が行われるばかりであり、結果として時間ばかりが浪費され、なんら具体的な成果を生み出さないまま自然消滅していってしまうのです。

◆プロジェクトチームが自らマネジメントすべき5つの項目
図1:プロジェクトチーム運営上の5つのマネジメントポイント

プロジェクトチームは、企業が抱える特定の課題を解決するための新たな取り組みを立案し、実際に推進させていく実務集団でなければ意味がありません。そのためには、企画部門に代表されるスタッフばかりでなく、必ずプロジェクトを実際に実行するライン部門の人間がメンバーに加わっている必要があります。その上で、プロジェクトチームの運営そのものをひとつのプロジェクトとして捉え、その運営がしっかりとマネジメントする事務局的な存在が重要です。企画・実行・管理のバランスが、プロジェクトチームには必要とされます。なかでも実務上必要とされるのが、管理=マネジメント面の強化です。

多くのプロジェクトチームが停滞や自然消滅に到ってしまうのは、プロジェクトチームがあたかも治外法権のように扱われ、適正なマネジメントが実行されないためです。プロジェクトチームの事務局などが次のような5つの側面に関してチームを適切にマネジメントしていくことが、プロジェクトチーム成功の鍵を握るといっても過言ではありません。

【Focus1. テーマ・マネジメント】
チームの目的・目標に関するマネジメントです。多くのプロジェクトチームが停滞を起こす最大の原因は、そもそもチームのテーマが具体的かつ明確に規定されないまま発足することによって、チームとしての統一された活動が行われないことです。このようなチームでは各人各様の思いつきのままにプロジェクトに手を着けるため、船頭多くして船山に登る状態になってしまいます。

【Focus2. リザルツ(定量評価)・マネジメント】
予算、達成までの期限、達成度を測るための指標の設定と評価等、定量的評価基準に関する管理のことです。企業活動において、これらが規定されていないものが成果を生み出していくことはなく、プロジェクトチームにおいても求められるポイントです。特にいくつかある定量評価基準の内、どの評価項目の優先順位が高いかについては、チームとして統一された見解を持っている必要があります。

【Focus3. タスク・マネジメント】
実際の作業内容に関する管理です。テーマとリザルツを達成するためには、どのような作業が存在し、誰がいつまでに何を行うのかがチームとして検討され、責任を持って遂行される必要があります。

【Focus4. コミュニケーション・マネジメント】
チームのメンバー間での連絡や報告、社内の各事業部門に対しての経過報告や要請事項の伝達、トップマネジメントに対するチームの推進状況の報告や必要とされるコミットメントの獲得などが、タスクの進行に連動して行われる必要があります。プロジェクトが迷走するひとつのパターンとして、トップマネジメントからのコミットメントをしっかりと取り付けていないため、プロジェクトがある程度進行した段階でトップの鶴の一声で方針が変更(最悪の場合は白紙撤回)され、時間と人的リソースを浪費してしまうというものがあります。特に事務局などが留意しておくべきマネジメントポイントです。

【Focus5. ヒューマン・マネジメント】
チームに対する人事評価などに関する規定が明確化されていなければなりません。ほとんどのプロジェクトでは、成果が外部から目に見える形で捉えられるようになるまでに、かなりの期間が必要とされます。その間、メンバーの人事評価が「成果が出ていない」という理由で低下するようでは、チームの士気は見る見る低下してしまいます。チームに対しては従来の成果中心の評価指標とは異なる指標が事前に準備される必要があり、かつ適切な評価が実施されることが求められます。

◆プロジェクト推進のための段階的アプローチ
図2:プロジェクト推進の段階的アプローチ

プロジェクトチームの運営は、次に挙げるような段階に分けた推進が理想的です。

【Level1. 達成目標の明確化】
 プロジェクトチームがスタート段階でまず明確にしなければならないのが、達成すべき目標の具体化です。プロジェクトチームの多くはトップマネジメントの発案で開始されますが、その時点で発案者自身から提示される目標は「環境分野での新事業の立案」や「顧客満足度の向上」など、抽象的な内容である場合がほとんどです。チームが有効に機能するためには、まず対象とするプロジェクトそのものが何を成果として求めるものなのか、チームが到達しなければならない成果とは何かを明確にしなければなりません。  どれだけの成果目標(当然、定量的に表されるものである必要があります)を、どの時点までに、どれだけのリソース(予算、人員、設備)で達成するのかを明確化し、発案者のコミットメントを求める作業が最初のステップとなります。  この作業が無いままにチーム運営が開始されると、チームの方向性や作業方針、運営スケジュール等を決定することができず、気がつけば自然消滅もしくは実現性の低い基本方針のみが策定されるという事態に陥ります。

【Level2. 推進スケジュールのステップ化】
 次の段階として、チームが目標達成のために行わなければならない、大まかな課題解決工程を検討していきます。通常、プロジェクトチームに課せられる課題は、次のような4つのステップに大別されます。これらについて、いつまでに誰がどの範囲を実行するかを決定していくことで、全体スケジュールを描いていきます。

−Step1:現状分析ステップ−
どのような達成目標であっても、前提条件としてマクロ・ミクロに関する経営環境の分析と、自社の経営状況ならびに経営資源状況に関する内部分析が必要不可欠となります。

表1:現状分析
◇マクロ環境分析 マクロ環境に関しては、PEST分析と呼ばれる4つの切り口が標準的です。
P(Politics) 政治的環境要因:業界や対象プロジェクトに関連する法令等
E(Economic) 経済的環境要因:マクロ経済の変化状況
S(Social) 社会的環境要因:人口構成変化や流行、ライフスタイル等の社会的変化
T(Technology) 技術的環境要因:プロジェクトに関連する技術進展状況
◇ミクロ環境分析 ミクロ環境については、業界での競合状況、市場動向は当然として、サプライヤー(原材料業者)の動向については、プロジェクトの成否に大きく影響を与えるため、特に十分な検討を加えておく必要があります。
◇内部分析 自社の状況分析に関しては、経営資源の分析を特に重視します。これは、プロジェクトに投入可能な予算、人員、設備、特許等の無形資産などの社内外のリソースの把握が、プロジェクトを立案・実行する上で必要不可欠なものとなるからです。

表2:PEST分析
役割内容
政治的環境要因
(Politics)
税制や商法などの企業経営全般に対する法制度変化、特定事業規正法など特定業界・業種に限定される法令の変化、国内外からの圧力による規制緩和やセーフガード発令など
経済的環境要因
(Economic)
マクロ経済の変化。GDP年間成長率の経年変化や公定歩合推移、地価動向など全業種に影響を与えるものと、消費者物価指数、民間設備投資動向、人口動態変化など業界ごとに特に重要な要因の双方に注意
社会的環境要因
(Social)
人口構成の変化、ライフスタイルの変化や流行、環境指向などの社会ムーブメントなど、その業種・業界に関連が深い社会的なトレンド傾向や状況を検討
技術的環境要因
(Technology)
ITの進展や新たな基盤技術の開発、生産管理技術や販売管理面での技術的な進展など、業種・業界全体に影響を与えると思われる技術面での革新状況を検討(新製品や代替品のようなミクロの変化ではない)

−Step2:基本戦略策定ステップ−
 現状分析の結果を勘案しながら、目標を実現するための基本戦略をチームで策定するステップです。チームが経営に対して提案する基本戦略ですので、このステップでの考察が不十分であるとプロジェクトは将来的に破綻してしまいます。必ず自社の経営環境とリソースに関して十分な討議を行い、一定期日までに戦略方針の社内での承認を獲得するようにしなければなりません(実際のプロジェクトチームの多数がこのステップで停滞してしまいます)。

図3:WBS(Work Breakdown Structure:作業分解図)

−Step3:タスク詳細化ステップ−
社内的に承認を受けた基本戦略の実行に必要とされる作業内容(タスク)を詳細化していきます。具体的には、プロジェクトを完遂するために必要とされる作業をまず「WBS(Work Breakdown Structure=作業分解図)」という重層形式に分解します。理想的には各タスクは、40時間以内でひとつの作業が完了する「ワーク・パッケージ」と呼ばれるものにまで分解されるべきですが、この段階ではそこまで詳細化する必要はありません。大まかなタスク単位での分解で十分です。逆にこの段階であまりにも詳細化しようとするとプロジェクト推進上での柔軟性を失い、予想外の事態が発生した場合にプロジェクトが停止してしまいます。 タスク単位にまで分解したならば、各単位で想定される必要作業内容、達成目標、遂行順序、担当部門・担当者、予想実行時間、必要とされる社内外のリソース(経営資源)などを明確化していきます。 このステップでは、WBSの検討をプロジェクトチームのメンバーで行い、タスク内容の詳細化に関してはタスク実施部門の担当者の責任で検討・明確化させ、その結果をチームに報告させます。チームはこれらを取りまとめた上で、全体の工程やスケジュールを最適化していきます。

【Level3. 全社的実行と定着】
タスク詳細化ステップが完了したならば、これを全社的に発表し、実施していきます。この段階でプロジェクトチームのメンバーは各部門に戻り、自身の部門でのプロジェクト推進の責任者として実務に着手します。
プロジェクトの実施にあたっては、先に分解したステップの内容をさらに詳細化し、ワーク・パッケージ単位にまで分解して進捗管理を行います。
プロジェクトチームそのものは事務局機能に特化し、プロジェクト全体に関して先に挙げたリザルツ・マネジメントとタスク・マネジメントを行っていくこととなります。


最後に繰り返しになりますが、プロジェクトチームの運営とチームが携わるプロジェクトの成否は、マネジメントポイントを明確化した上でしっかりとしたマネジメント体制を計画的に構築し、実行していくことにかかっています。
経営環境のダイナミックな変化に対応したプロジェクトを遂行する、優れたプロジェクトチームを実現させてください。