【連載】営業強化戦略−勝ち続ける企業への変革−

■第9回 営業管理職を強化する(2) 営業の生産性向上

◆はじめに

あなたは営業管理職です。今期の売上目標予算が前期比30%増だったとします。現状のスタッフと商品でこれを達成しなければなりません。達成するためには営業部門の生産性を向上させるしかありません。では、どうすれば生産性は向上するでしょう?

◆営業活動の生産性を検証する

営業部門において生産性を考える場合、その指標として最もわかりやすいのが担当者一人当たりの受注額です。では、受注はどのようにして生まれてくるのでしょうか。有効なプロモーション活動やすばらしい企画提案書、思わず引き込まれてしまうようなプレゼンテーションやセールストークなども確かに重要です。しかし最も根本的かつ重要なのが、営業担当者が受注に向けて行う「活動の絶対的な量」です。

図1:成果は保有能力と活動の結果生まれる

成果というものは、各担当者が持っている能力(保有能力)と受注に向けて実施した活動量との掛け算によって生み出されます。担当者の保有能力がいくら高くとも、実際の活動量が少なければ望むような成果は達成されません。一方、少々保有能力が低い場合とも、活動の絶対量が多ければ成果は(少々ゆっくりではあっても)必ず達成されてきます。

さて、自社の営業部門を見てみましょう。活動の絶対量を増やせる余地はありますか?「毎日残業ばかりでこれ以上は無理だ」「30%受注を増やすために今より30%活動量を増やすと24時間で収まりきらない」という現場の悲鳴が聞こえてくると思います。ではどのようにして活動の絶対量を増加させていけばよいのでしょうか。

ここで注目すべきポイントがあります。営業担当者が行う活動には、受注に向けて有効な活動と有効性のない活動があるということです。図2は平均的な営業担当者が勤務時間中に行っている活動内容を分類したものです。

図2:営業活動内訳の例

営業担当者の活動はまず、大きく社外活動と社内活動に分類されます。多くの営業部門では、社外活動イコール営業活動という捉え方をしています。しかし社外活動において成果達成に有効な活動は、実は「得意先訪問」の中の「発展的商談」の部分のみです。納品や集金、クレーム処理は受注後の単なる業務処理であり有効性はほとんどありません。確かにクレーム内容には商談の芽があるかもしれませんが、本来クレーム等は発生してはならないものであり、その処理に時間を割くことは成果達成に向けた活動に当てる時間を減少させているといえます。

一方、社内活動においては「TEL商談」「商談用の資料作成」「顧客・見込み客からの問合せ対応」が直接成果に結びつく活動です。また、間接的には「会議・打ち合わせ」における情報交換や成功事例・失敗事例の分析などが含まれるでしょう。

以上の観点から部下の行動を次のような切り口で分類し、それぞれに消費している時間を分析してみましょう。

  1. 受注に有効で売上増につながる活動時間
  2. 受注に有効だが売上高の維持活動のために使っている時間
  3. 受注に直接つながらないが担当者の専門性が必要な活動の時間
  4. 受注に直接つながらず担当者の専門性も要求されない時間

結果はどうでしょうか?意外なほど1.に使われている時間が少ないことに気づかれると思います。特にルートセールスを中心としている営業体質の場合、2.ならびに3.にほとんどの時間を割いていることと思われます。受注維持に関する活動は確かに重要ですが、こればかりでは生産性の向上を見込むことは出来ません。

◆活動内容のリストラクチャリングは管理職が行うべき業務
図3:活動内容リストラクチャリングの視点

このように活動内容を時間で分析すると、売上増につながる活動が今以上に必要であることが多くの企業でわかってきます。しかしここで管理職が「売上増のための活動をもっと多くしろ」と指示しても、担当者はどうやればよいのかわかりません。なぜなら、現状でも残業しなければならないほど業務は繁忙であり、どこから時間を捻出すればよいのか見当もつかないでしょう。部下は怠慢なのではなく、やらなければならない(と本人が思い込み、周囲もそのように理解している)業務が多すぎて時間がとれないのです。活動内容そのものをリストラクチャリング(再構築)しなければ現状からの変化はありえません。

分析結果に基づき、部門の活動内容のリストラクチャリングを設計・計画し実行に移す活動ができるのは管理職のみです。具体的には図3のように不要不急な活動の削減や効率化、専門性を要する作業の標準化を行うことによって現在の担当者以外での対応を可能にする、維持活動をバックオフィス部門に移管するなど、業務の組み立て自体を変えていくことで部下の時間的余裕を生み出し生産的な活動へと振り向けていく必要があります(図3の1→2→3の順で検討していきます)。

そしてこのような活動内容の変革は他部門や上層部の理解なしでは実行できません。このコミットメントを獲得できるのは部門を率いる営業管理職のみです。部下の活動可能な時間を確保し、その時間を有効活用する計画を立案してPDCAのマネジメント・サイクルを使いながら導いていくことこそが管理職に求められる職務です。


 次回は営業管理職に求められる能力として、部下の指導・育成という人材開発面に関して解説します。