【連載】営業強化戦略−勝ち続ける企業への変革−

■第11回 顧客満足を強化する

◆はじめに

新規顧客のファン化、既存顧客との関係維持において「顧客満足」は必要不可欠な要素となります。この顧客満足という概念は既に一般に浸透していますが、企業がこれを実現する際の前提条件について十分な検討がなされないまま言葉だけが独り歩きしているケースが多いようです。

◆顧客満足を実現するための3つの条件

企業が顧客満足を経営活動として実現するためには次の3つの条件が必要です。

【1.商品・サービスが業界水準よりも優れていること】
顧客が満足するか否かの大前提として、顧客が対価を支払って購入あるいは採用した商品・サービスのそのものが少なくとも競合他社が提供している水準を上回っていることが求められます。製品不良やサービスの不備などが多発している状況では顧客満足の実現はありえません。また、競合他社と同程度の水準では、他社ではなく自社を選択してもらうための顧客ロイヤリティ(顧客が自社や自社の提供する商品やサービスに愛着を感じること)も醸成されません。

苦情・クレーム処理に顧客ニーズが潜んでいるという内容の意見もよく聞かれますが、これも確実に満足を与えられる商品やサービスを提供していることが大前提です。通常の利用法ならば決して問題が生じないような商品、大多数の顧客からは強い支持を集めているサービス内容に対するクレームであるからこそ、自社が改めるべき点や新たな商品・サービス開発のヒントを見つけることが出来るのです。

自社が商品やサービスを通じて顧客に提供しようとしている価値は何なのか。顧客から見て競合他社よりも高い価値を実現していると判断してもらえるかどうか。これらに関する考察が顧客満足実現への最初の一歩です。

【2.顧客満足実現に向けて働きかける対象顧客が明確であること】
すべての顧客に対して顧客満足実現に向けた活動を行うことは、販売促進費などの経費の慢性的な増大化を生み、結果として企業の収益力を低下させてしまいます。また、自社が積極的に関係強化を図りたいと考えている上得意の顧客からは「他の小口の客と同じ扱いを受けている」という不満を発生させ、自社よりも特別扱いしてくれる競合他社へ乗り換えられてしまいます。

図1:ロイヤルカスタマー(優良顧客)が企業にもたらすもの

顧客満足の目的は、将来にわたって関係を強化したい顧客とのリレーションを緊密化することでロイヤルカスタマー(優良顧客)になってもらい、図1にあるような効果を実現することです。自社にとって「真の顧客」といえる顧客とはどのようなプロフィールを有する相手なのかを事前に検討し、しっかりと見定めることが活動の前提です。

【3.顧客満足に向けた活動を行う従業員の満足が醸成されるように配慮されていること】
顧客満足実現に向けた活動は一過性のものではなく、長期にわたって継続されなければなりません。顧客との関係が長期にわたるということは、顧客からの要求水準(つまり満足してもらうための基準)は常に上昇し続けていくことも意味します。より難易度の高い製品仕様、より多様なサービス内容など常に顧客との関係強化のための方策をうち続けていく必要があります。そのためには、顧客を担当し続ける従業員のモチベーション(士気)が低下することの無いように企業は配慮する必要があります。

従業員満足を実現するためには何らかのインセンティブ(報奨)を与えることが有効です。このインセンティブは金銭的報奨と非金銭的報奨に分けることができます。顧客満足度調査などで満足度向上に貢献した従業員に対して給与や賞与、福利厚生などで報いるのが金銭的報奨、社内で表彰したり役職や権限で報いる、あるいは自己実現の場を与えたり自己啓発の機会を提供するなどが非金銭的報奨です。両面でのインセンティブを提供することが理想的であることはいうまでもありません。

また、このようなインセンティブが継続的に効果を表すよう、経営者や部門責任者は自社の価値観として顧客満足が重要であることを常に表明し続け、企業風土として定着するよう努めなければなりません。

◆営業担当者が持つべき4つの観点:顧客の4C
図2:顧客の4C

顧客満足向上のための活動において営業担当者がまず認識しなければいけないことは、「提供する側の視点ではなく、顧客側の視点で考える」という点です。具体的には、次のような4つの切り口で自社はどうか、競合と比較した場合はどうかを考えてみると良いでしょう。

【1.顧客価値(Customer Value)】
顧客が事前に商品やサービスに期待している価値は具体的にどのような内容であり、求めている水準はどのようなレベルであるか。自社はそれに十分応えられているか。

【2.顧客コスト(Customer Cost)】
顧客がその商品やサービスを採用するに当たって支払うべきであると考えているコストはどれぐらいか。そのコストはどのような前提で試算されているのか(競合品の価格、顧客の価値観、解決される問題に関する経済効果など)。自社が行っている価格設定はこれに応えられているか。

【3.利便性(Convenience)】
顧客がその商品やサービスを購入あるいは採用する際の利便性はどうか。店舗などの場所だけでなく、納期、支払条件なども含めて顧客の期待に応える内容であるか。

【4.コミュニケーション(Communication)】
顧客が期待するような情報提供がなされているか。方法は顧客に適しているか。提供頻度は適切か。問合せ等に対応できるように双方向での情報交流が可能な体制がとられているかどうか。


次回はこの連載の最終回として、売れ続ける組織として備えておくべき機能について解説します。