■団塊&シニアマーケットを狙え! 第5回:団塊・シニアの購買基準を検討する

◆はじめに

人口構成の変化はすでに始まっています。そのような現状から、企業がマーケティング活動を検討していく際に中核的消費者層のひとつとして注目しなければならない、団塊・シニア市場の今後について今回から検討していきます。

具体的には、50代から60代前半を「シニア前期」、60代後半以降を「シニア後期」ととらえ、それぞれの世代において想定される「消費者としてのシニア世代」の代表的ないくつかの姿を想定し、それぞれのタイプのニーズにマッチングした商品やサービスを考えていきます。

その前提として今回は、シニア市場とその他の世代向けの市場ではニーズがどのように異なるかを、消費者ニーズ探索の代表的な手法である「心理的7つのサイフ」という考え方を使って概観することで、シニア市場での商品企画・サービス開発の方向性を整理したいと思います。

◆シニア市場の購買要因を「7つのサイフ」から検討する

消費者の購買行動を検討する際に用いられるポピュラーな手法である「心理的7つのサイフ(The Seven "Psychological Purses" of Consumer Awareness)」を基に、シニアの購買要因を考えてみます。「7つのサイフ」とは消費者が商品・サービスに対価を払うときの心理的な目的を、7つに類型化したものです。

1. 家族する(Family Activities)

日常的な家庭生活を営む上での基盤である「理想的な家族」を形成するための消費です。シニア以前の世代では、日常的な生活用品のほかに、住宅購入や自家用車の購入、子育てのための支出などが主要なものとなります。
シニア世代に突入すると、住宅ローンの終了や子供の独立というように「家族」そのもののあり方が変化してきます。当然、「家族する」ための消費目的・消費内容も大きく変化していきます。
子供の独立、定年後の新たな形での夫婦関係など、新たなライフステージへの対応の必要性は、従来型の「家族するための消費」を「あらたな形での家族を形成するための消費」へと変化させていくものと思われます。
この点から消費支出の対象が子供から孫へと変化する、あるいは配偶者との関係を強化するための消費(例えば夫婦での旅行や、住環境の快適化のためのリフォームなど)が増加する、両親ならびに自分たち自身の将来的な介護などを見越した出費などが顕在化してくるといった傾向が予想されます。

2. 将来に備える(Future Preparation)

大多数のシニアにおいては、現役時代よりも収入の減少は避けられないものとなります。
ここから、「将来に備える」消費は団塊・シニアにおいては大きなマーケットとなるものと考えられます。このような将来に備えるための消費は、年代別に大きく異なる2つの方向性が考えられます。
団塊世代を中心としたシニア前期世代においては、将来への金銭的な備え(金融商品の購入など「増やす」タイプ)や、定年後も働き続けるためのキャリア形成・資格取得などへの出費という、将来に対する前向きな備えというタイプの消費が想定されます。
一方、シニア後期世代においては、貯蓄等の金融資産の維持(「守る」タイプ)、自分自身の健康維持管理に向けての出費、ケア・ハウスなどの終の棲家の購入など、防衛的な色彩を強く持つ消費が中心となるものと思われます。
なお、この「将来に備える」消費は、世帯の収入レベルや保有資産状況によって、同一の年代内においても消費傾向が細分化されるものと考えるべきです。

3. おいしいものを食べる(Tasty Eating)

人間は生きているかぎり食事を採り続けなければなりません。しかし、その食事が内包している目的や価値観は、世代や生活レベルによって大きく異なります。
いわゆる「アクティブなシニア」という呼ばれ方をしているシニア前期での高収入セグメントでの「おいしい」と、エイジングへの抵抗として身体能力の維持を目論む場合での「おいしい」とでは価値基準が大きく異なります(これは当然シニア後期においても同様です)。つまり、このカテゴリーでの消費においても、年代別・世帯収入別・ライフスタイル別で細分化された市場が発生すると考えるべきです。特に身体機能の維持が大きなテーマとなるシニア市場の場合、従来のメニュー構成や価格帯などは見直すべき時期が来つつある都考えるべきです。
また、ここでいう「おいしい」とは単に食事そのものを指すばかりではありません。食事をとる環境(外食ならば立地、店舗環境、サービス内容、中食であれば包装や提供単位なども含む)も一層重要なファクターとなってくるでしょう。

4. 自己啓発(Self-Enlightenment)

シニア世代での自己啓発は、セカンドライフでの生活に対する考え方に基づいて大きく2つの方向に分類されます。
ひとつはシニア前期に特徴的な、従来の社会生活(例えば会社生活)との関係を維持することを主要な目的とし、副次的には社会的地位と収入を確保することを目的となるタイプの自己啓発(例えば資格取得)です。
もうひとつは、シニア前期の後半あるいはシニア後期に今後顕著となるであろう、従来の社会生活との関係性が希薄化するに連れて必要となってくる、余暇時間の有効消費のための、あるいは新たなコミュニティへの参加資格としての自己啓発(例えば教養講座や趣味の講座)になります。いずれの場合も、ライフステージの変化への取り組み姿勢、世帯収入などと密接に関係したものとなります。

5. おしゃれ(Fashion)

衣食住という言葉に示される、人間の消費欲求の3大要素のひとつである「衣」に関してシニア層では、品質へのこだわり、アンチエイジング(加齢への抵抗)などが一般的な要素としてすぐ思いつくと思います。
これらの要素は、衣類という商品を通じて強く前面に押し出されてきますが、さらにはライフスタイルと融合することで、シチュエーション別の「自分が考えるシニア像」の演出、その結果としての特定ブランドへの強いロイヤリティなどという形でも表れてきます。
このような点から、「おしゃれ」という要素は単に「衣」だけではなく、ライフスタイル全般にわたる趣味嗜好と深く関わってくる要素であると理解しなければなりません。
そしてライフスタイルに対する考え方の基盤として留意する必要があるのが、以前のコラムでも述べた「コーホート(世代)」という共通体験への配慮となります。

6. ギャンブル(Gamble)

ギャンブルといっても単純に賭け事を示すわけではありません。
むしろ今までやってみたかったけれども勇気がなくて出来なかったお稽古事や、欲しかったけれども買わずに来たこだわり商品の購入、若い頃から夢見ていた豪華な海外旅行など、それまでの社会生活では必要性が高くないので手を出さなかったが「この際だから」という心理での背伸びをした消費がこれにあたります。いうなれば賭け事をしているときのような、緊張感や興奮を与えるものと考えればよいでしょう。
このカテゴリーの消費の重要なポイントは、日常的に営んでいる消費生活とは乖離しているタイプの消費であるという点です。通常のマーケティング分析であればターゲットとしないカテゴリーの消費者が、実は対象となる可能性が高いということに留意すべきです。特にシニア前期のようなライフステージが大きく変化する時には、このような「ギャンブル」消費が発生すると考えてよいでしょう。

7. ちょっとしたつきあい(A bit of Entertainment)

シニア層、特にシニア前期から後期への移行時期においては、それまでとは異なる形での人間関係や社会関係の構築が必要となってきます。
会社勤めをしてきた人間であればあるほど、その人間関係や社会関係は会社という組織に依存してしまっています。シニア期に入るということは、組織からの引退を意味し、何らかの形で新たな集団=コミュニティに属さなければ、社会との接点をほぼ失ってしまうことにもなりかねません。
シニア以前の世代においては、「ちょっとしたつきあい」での消費は特に大きな地位を占めません。しかし、シニア世代においては「コミュニティへの参加費用」という側面を持つ消費となります。このため、今後のシニア世代にとって非常に重要な意味を持つ消費となっていくものと思われます。
特に自治体等が主催する従来型の「老人会」などが、その画一性などから参加人数を減少させている一方で、新たな受け皿としてボランティア活動への参加などが増加している現状などから鑑みても、今後このような「新たなコミュニティでの活動」にかかわる消費は増加すると考えられます。

次回は、企業や店舗が団塊・シニア世代の消費者に対して商品やサービスを提供する際に特に求められる、コミュニケーション(=広義のプロモーション)手法について、その特徴的な留意点を検討していきます。