■社長直轄の部署を創設する際の留意点

◆はじめに

企業が新事業進出や新製品の市場投入などによって大規模な経営改革を図ろうとする際に、それを担当する部署を社長直轄とすることが多いものです。しかし、ただ社長直轄部署を創設すれば上手くいくというものではありません。ここでは社長が留意すべき、人選の仕方、報・連・相に代表されるマネジメントの行い方について解説していきます。

◆社長直轄部署の人選のポイント

社長直轄部署が必要とされるような取り組みは通常、従来業務とは異なる専門性が必要とされるものが多いものです。このため、社内で高い専門性を有する人材を選抜していくこととなります。取り組み分野に対する専門的な知識や実績は当然重視しなければなりませんが、さらに留意すべきポイントとしては次のようなものが挙げられます。なお、社外から専門家やOB人材などを中途採用して対応しようとする場合は、より一層これらのポイントへの留意が必要です。

1. 改革や改善に対する志向が強い人材か
 過去の実績も重要ですがそれ以上に重視すべきなのが、業務に関する新しい取り組みを自ら提案し現在も実行しているかどうかです。イレギュラーな業務が多く発生するこのような部署では、与えられた業務をそつなくこなす人材よりも、常に向上しようとする資質を持つ人材が求められます。

2. コミュニケーション能力が高い人材か
社長直轄で取組まねばならない業務では、部署内での情報共有はもちろんのこと、他部門や外部(協力企業や株主など)とのシビアな調整が発生することが多くなります。業務に対する専門性が高くともコミュニケーション能力に問題がある場合、取り組みに対する社内外の同意を得ることが難しくなるため望ましくありません。

3. 業務完遂能力がある人材か
いわゆるアイディアマンを否定するものではありませんが、企業としての重要な取り組みの場合にはむしろ、ゴールに確実にたどり着ける粘り強い人材が求められます。特にこのような部署が担当する業務は、その成果が現れるまでにかなりの期間を要するものが多く、成功するまでやり続けられる資質が強く求められます。

4. 組織は3人の専門家と1人の管理者が基本
専門性の高い人材はプライドも高く、意見の異なる者とは対立構造に陥りやすい傾向があります。このため、専門性の高い人材は少なくとも3人にすることにより1対1の対立関係にならないように配慮すべきです。また社長には、部署を統括し各人の意見調整をする役割が求められます。

◆社長が行うべきマネジメントの内容

「新たな取り組みの成功のカギは経営者自らが推進することである」とよく言われます。しかし実際には戦略的な直轄部署とはいえ、社長が常にその部署のためにのみ時間を割くことは困難です。このため、社長直轄部署では管理者不在になることを防ぐ必要があり、計画的にマネジメントを行うことが求められます。これをPlan−Do−Seeのサイクルで解説すると次のようになります。

1. Plan(計画):目標は社長が示し、取り組み手順はメンバーが立案する
いくら優秀な人材であっても従業員である限り、現状からの大きな飛躍を内容とする目標設定は困難です。これが唯一可能であるのは経営者です。部署が取組むべき課題の最終目標は社長自ら示す必要があります。
一方、目標達成のための手順は当該業務に従事するメンバーによって、「いつまでに、何を、どれだけ達成するか」「そのために必要とされる活動は何か」という観点からステップごとに立案させ、自発的に取組むように仕向けることが重要です。なお、各ステップは1ヶ月未満を基本単位とすることで、進捗状況の把握が行いやすいように工夫すべきです。

2. Do(実行):権限委譲での責任と権限のバランスに留意する
社長直轄部署では、多忙を極める社長の負担を軽減しつつ取り組みの効率化を図るためにも、ある程度の権限委譲が不可欠となってきます。その際に注意しなければならないポイントとして、各人が果たさなければならない責任と、それぞれが決定可能な権限範囲を、必ず最初に明確化することが挙げられます。無分別な権限委譲は(社長直轄部署であるからこそ)暴走を招くこととなります。
具体的には、計画段階でメンバーが立案した実施計画を基に、各人のステップごとの達成目標(責任範囲)をメンバー自ら表明し、社長はその達成に必要とされるであろう権限の付与範囲(予算枠、他部門・他社との折衝範囲など)を規定するという手順になります。最も行ってはならないのは、権限だけを委譲し責任範囲をあやふやにしてしまうことです。

3. See(報告・評価):成果のみならず実行プロセスも重視する
報告を受けるための会議は必ず定期的に設定してください。社長直轄部署が必要とされるような取り組みは、業務の遂行方法そのものが通常業務と異なる場合が多く、達成成果や取り組み結果だけを報告書形式で受け取っても、その具体的な進捗状況や課題が判別しにくい性格があります。むしろ活動内容そのものに経営環境の変化や競合他社の動向、顧客や業界での評価などを示唆するものが多く含まれている傾向が強いです。これらはきれいに清書された報告書では読み取れないニュアンス的なものも多いため、必ず担当者の生の声というプライマリー・データ(第一義情報)が必要となります。

報告は各人による報告書を準備した上での会議の形式が求められます。会議が必要とされる理由は、全員が情報を共有することにより取り組み課題の把握と解決方策の合意を一度に図るためです。社長が個別に面談することは、部署内で情報や課題理解の偏在を招くことになり、望ましくありません。報告書は会議の効率的な進行と目標達成度の把握のために不可欠です。
なお、日々の報告に関しては日報やメールなどでも構いませんが、可能なかぎりメンバー全員が閲覧できる仕組みを整え、課題に対する認識の共有化を図るように仕向けておくべきです。