中堅・中小企業のための失敗しないプロジェクトチーム運営方法
第1回 プロジェクトの類型と事業創造型プロジェクトの進め方

はじめに

堅・中小企業においても、新たな収益源の確立を目指して、新規事業や新製品開発などに向けた取り組みをプロジェクトとして立ち上げるケースが増えています。このようなプロジェクトの多くは経営トップの意向により開始されます。そして経営トップの下に、実際にプロジェクトの計画から実施までを担当するプロジェクトチームが(公式・非公式、規模の大小を問わず)編成されることとなります。

プロジェクトの3つの類型

通常、プロジェクトとしての取り組みは以下の3種類に分類されます。(図1)

 代表的なプロジェクト経営上の視点担当
事業創造型・新事業進出
・新商品・新サービス開発
・M&A、アライアンス(提携)
中長期経営戦略との整合性組織横断的に選任されたチーム
組織改革型・人事制度改革
・ISO等の認証取得
・会計制度改革
年度計画・財務活動との関係管理部門を中心とした専従チーム
業務改善型・TQC・5S等小集団活動
・部門別経費削減運動
・新規開拓活動
月次・四半期単位での経営管理チーム単位での実施
管理部門での集約
1. 事業創出型プロジェクト

新規事業の創出や新製品開発など、従来自社が対象としなかった事業や市場への進出により、新たな事業基盤を確立しようとするプロジェクトです。中長期の経営戦略の一環として取り組まれるものであり、難易度も非常に高い内容となります。M&Aへの取り組みなどもこの範疇に含まれます。
企画、購買、製造、営業などの一連の新たな企業活動の仕組みを作っていくことになるため、取り組みにあたっては組織横断的なチームが必要とされます。

2. 組織改革型プロジェクト

人事評価制度の改革や事業部制への取り組みなど、より効率的な事業運営を目指した社内改革を目的とするタイプのプロジェクトです。事業創出型と異なり、自社の事業領域の変更などは伴わず、経営管理体制の強化を主眼とする点が特徴です。財務管理との関連性が強く、人件費や販売費・一般管理費などの経費面での効率向上など年度単位での目標達成が主眼となります。
管理部門が中心となって進めるケースが多く、人事・総務や経理、経営企画や社長室などプロジェクト担当部署がある程度絞り込まれる傾向があります。

3. 業務改善型プロジェクト

TQCや5Sなどに代表される、特定部門の業務改善を目的としたプロジェクトです。取り組みのサイクルは通常月次から四半期単位で、細かく設定された目標に対する達成度を管理していきます。
 大々的なプロジェクトチームを編成がされる場合は少なく、チーム単位での取り組みを集約する形で運営される形態がとられます。

本レポートではこれら3種類のうち、最もプロジェクト期間が長く、難易度の高い「事業創出型プロジェクト」に関して、プロジェクトの進め方の基本的な考え方と、プロジェクトチームが果たすべき役割について解説していきます。

事業創造型プロジェクトにおける基本ステップと目標設定

新事業進出や新商品開発などの事業創造型プロジェクトは通常、中長期的な取り組みになるケースが多く、おおむね次のような4つのステップを経て発展、拡大していきます。

第1ステップ:プロジェクトの前提条件の整理

事業創造型プロジェクトは自社の中長期の経営戦略との関連性が高いものです。当然、プロジェクト着手の前提とする自社を取り巻く経営環境の変化や自社の現状分析を行なうことにより、プロジェクトの成功可能性を判断するステップが必要となってきます。
活動内容としては、事業環境に関してマクロ(世の中全体)の動向とミクロ(業界と市場)の動向に関しての分析、創造しようとする事業での先行事例等に関する調査・分析、自社の経営資源の状態に関しての再確認になります。

事業環境分析手法として、マクロ環境に関しては「政治、経済、社会、技術」という4つの観点から整理していく「PEST分析」(図2参照)、ミクロに関しては「ユーザー(買い手)、サプライヤー(売り手)、新規参入業者、新製品・代替品、業界内の競合他社」という5つの要素の影響力から整理する「5Force分析」(図3参照)が一般的です。
先行事例等の調査・分析に関しては、調査会社のレポートやインターネットでの検索エンジン活用などが手軽ですが、必ずアンケートやインタビュー、観察などの「実査」と呼ばれる実地調査を行い、裏づけを取っておくことが必要です。

図2: PEST分析
政治的環境変化
(Politics)
商法改正や税制改正などの企業経営全般に関する法律変化や特定業種に関する規正法の変化、国内外からの圧力による規制緩和や規制強化やセーフガード発令、参入障壁の強化や撤廃など
経済的環境変化
(Economic)
マクロ経済の変化。GDP成長率の変化や金利水準の変化、為替動向などの全産業に影響を与える国際的な変化と、機械受注動向や消費者物価の変化などの国内景気動向に関する変化など
社会的環境変化
(Social)
人口構成の変化やライフスタイルの変化、流行や環境志向のような社会的ムーブメント、中心購買層の変化による購買要因の変化、世代変化に伴う価値観の変化など
技術的環境変化
(Technology)
新たな技術基盤の開発動向や、先進的な学術研究の動向など、今後の事業活動に大きな変化をもたらす可能性のある変化など

図3: 5Force分析
ユーザー(買い手)ユーザーニーズの変化や購買力の変化、品質や価格に対する要求度の変化、購買層の変化など
サプライヤー(売り手)原材料や資材業者の変化、新しい原材料の出現、原産国のカントリーリスクなど
新規参入業者新規参入業者の企業力やマーケティング戦略(商品構成、価格設定、流通チャネルなど)の脅威の度合いなど
新製品・代替品従来商品に脅威を与える新製品や代替品の出現状況、今後の業界での新製品開発の方向性など
業界内の競合他社業界大手の経営戦略の動向と、同一地域・同一顧客を対象とする同規模の同業者の動向変化など
第2ステップ:プロジェクトのアウトラインの策定

第1ステップでの結果を受けて、プロジェクトの対象範囲や推進方法に関して内部で検討していくステップになります。
取り組む新規事業の内容について対象とする顧客層の明確化や提供する新商品・新サービスの具体的なコンセプト作り、事業目標の設定とその実現のための研究開発やマーケティングでの取り組み内容などを明確化していき、事業計画書や新製品開発計画書などの形式でまとめ上げていきます。

まとめ上げた計画書などは、できれば外部の専門家などの評価を受けるべきでしょう。中堅・中小企業であれば、各地の商工会議所などの中小企業支援機関・団体に駐在している中小企業診断士や税理士などの専門家の無料相談制度などを活用するとよいでしょう。

第3ステップ:プロジェクト活動内容の明確化と具体的推進体制の決定

プロジェクトの内容を具体的な事業活動の計画に落とし込んでいくステップです。第2ステップで作成された計画書などをもとに、担当部署や担当部門を決定し、活動スケジュールと達成目標(例えば基本設計はいつまでに完成、試作品のユーザー評価は誰を対象にいつまでにやるなど)をおおむね月次単位で設定していきます。

このステップでプロジェクトの取り組みスケジュールと達成目標が詳細に設定できるかどうかが成否のかぎを握るといっても過言ではありません。
計画手法としては、取り組み内容を“成功可能性調査”“テストマーケティング”などの大まかなフェーズに分割し、その活動内容を洗い出して時系列に配置していく「フェーズ管理法(PPP:Phase Project Planning)」が適しています。

第4ステップ:プロジェクトの実行

事業創造型プロジェクトの最終目標は収益を産む事業として実現されることです。つまり実際の日々の事業活動レベルとして、従業員が活動を行い、継続的に売上と収益を上げていける内容にまでブレイクダウンされる必要があります。
フェーズ管理法で分割した内容を、おおむね週単位で区切ることができる作業レベルまで分解し、それぞれの作業に担当者を設定し、活動スケジュールと期日、達成すべき目標を日程表(あるいは工程表)として作り上げ、現場で管理していけるようにします。

ステップ 目的 計画単位 手法
第1ステップ
プロジェクトの前提条件の整理
調査・分析 中長期 ・PEST分析
・5 Force分析
・実査
第2ステップ
プロジェクトのアウトラインの策定
全体計画・コンセプト作り 年度 ・ブレインストーミング
・外部専門家
第3ステップ
プロジェクト活動の明確化と
具体的推進体制の決定
活動計画化 四半期・月次 ・フェーズ管理法
第4ステップ
プロジェクトの実行
実施 週単位 ・工程表