中堅・中小企業のための失敗しないプロジェクトチーム運営方法
第2回 プロジェクトチームのメンバー選抜基準

はじめに

プロジェクトチームというと、大手企業の専売特許のように感じられるかもしれません。しかし中堅・中小企業においても、事業創造型プロジェクトへの取り組みは求められており、このような取り組みでは、従来の組織の枠にとらわれない形で人材を集めた何らかのチームを作られる必要があります。

しかしながら、優秀な人材で編成されたはずのチームが機能不全を起こし、所期の目標を達成できないまま空中分解を起こしてしまうケースもまま見受けられます。なぜこのようなことが発生するのでしょうか。その原因のひとつとして、プロジェクトチームのメンバーの人選が正しくないことが挙げられます。特に事業創造型のプロジェクトを行う際には、組織改革型や業務改善型のプロジェクトとは異なる視点で人材を集めなければなりません。
本レポートではその具体的内容を、次の2つの観点から解説していきます。

  1. 事業創造型プロジェクトに適した人材とは
  2. プロジェクトの発展段階に配慮したチーム構成とは

事業創造型プロジェクトに適した人材とは

事業創造型プロジェクトでは、定型的な業務手順や経験というものは基本的に存在しません。だからと言って、企画調査を得意とするスタッフ部門だけでは力不足ですし、専門家ばかりだと課題の困難さばかりが強調されてしまいます。また、実務担当者がいなければ机上の空論にしかなりません。プロジェクトチームは、次に挙げるような基本的な資質を持つ、多様なメンバーによって構成される必要があります。

1. 対象分野において高い専門性を有する人材

事業創造型プロジェクトでは、当初想定されなかったような課題が数多く発生します。このような課題に対し、迅速で的確な判断を下すことができる資質を持つ、高い専門性を有する人材がメンバーとして不可欠です。
対象分野に関する専門家を社内では見つけにくい中堅・中小企業においては、大学の研究者やコンサルタントなどの外部の専門家を、プロジェクトの期間だけオブザーバーとして招くことで対応されるとよいでしょう。

2. 起業家的精神(アントレプレナーシップ)を有する人材

事業創造型プロジェクトにおいては、与えられた業務をそつなくこなす人材ではなく、新たな課題に対して自ら積極的に取り組もうとする、起業家的精神を持つ人材も必要不可欠な存在です。
このような人材はプロジェクトの推進エンジンになります。必ず社内からプロジェクトの中心メンバーとして選抜してください。

3. 高いコミュニケーション能力を有する人材

プロジェクトチームで取り組まなくてはならない業務においては、メンバーがそれぞれ勝って気ままに業務に取組んでも成果は上がりません。チームとして機能するためには、チームメンバー同士の横のコミュニケーションが緊密に行われる必要があります。また多くのプロジェクトは組織横断的な取り組みになるため、他部門や社外関係者との折衝や調整などの、対外的なコミュニケーション能力もリーダーやサブリーダーには不可欠です。
コミュニケーション能力は選別メンバーに必ず必要となる資質であると考えてください。この点で問題がある人材はチームメンバーに適していません。

4. 業務完遂能力を有する人材

プロジェクトが目的を達成できなければ、時間と資源の無駄遣いで終わってしまいます。多くのプロジェクトが優秀な人材によるチームでありながら成果を上げられない原因には、実務家がメンバーに少ないという事実があります。アイディアマンを否定するものではありませんが、事業活動としての取り組みであるからには、ゴールに向けて着実に粘り強く業務を遂行し続けられる人材が求められます。
過去に組織改革型や業務改善型のプロジェクトなどで実績を残した人物や、営業目標を毎期達成している人物といった、現場での実務能力の高い人材を組み込むことによって、プロジェクトの最終的な目標達成の実現度合を高めます。
特に事業創造型プロジェクトでは、成果が目に見える形であらわれてくるまでに相応の期間が必要とされます。「面白いことがやりたい」タイプばかりではなく、「必ずやり遂げる」タイプの人材を配置することで、途中で投げ出さないチームが形成できます。

5. 俯瞰的・長期的な視点を有する人材

事業創造型プロジェクトにおいては組織横断的な取り組みが必要とされます。このため、企業の全体像が見渡すことができるとともに、業界や社会全体の変化にも幅広い視野を持つ人材が必要となります。逆に、自身が属する部門や短期的な利益などにとらわれてしまう人材は、実務的な能力が高くともプロジェクト型の業務には向いていません。
企画スタッフなどが不足しがちな中堅・中小企業においては、社員からこのような人材を探すことは困難であるというのが実際でしょう。この役割は経営に責任を持ち、企業の方向性を決定する存在である、経営者もしくは経営幹部がチームリーダーとしてプロジェクトに参画することで対応してください。

6. 全体を管理・統括する責任者

プロジェクトチームにいくら有能な人材を配置したとしても、プロジェクト推進のために必要とされる予算や人材といった経営資源の獲得や、社内外の関係者の協力体制を取り付けることのできる高位の役職の責任者がいなければプロジェクトは推進しません。チームを作ればあとは任せきりというのでは成功はおぼつかないでしょう。理想としては経営者自ら、最低でも部門長クラスの権限を与えられた責任者をプロジェクトチームには配置すべきです。

チーム構成はプロジェクトの発展段階にあわせて変化させる

さて、ではこのような多様な人材がすべて、最初から最後までチームには必要なのでしょうか。人材が不足しがちな中堅・中小企業でプロジェクトを立ち上げることは難しいのでしょうか。そのようなことはありません。

事業創造型プロジェクトでの取り組みはステップに分解されることは既に解説したとおりです。それぞれのステップにおいてチームが達成すべき目標と、そのために果たすべき役割は異なります。つまり、チームはプロジェクトの進展にあわせ、変化させていくべきものなのです。メンバーは随時補強していけば良いのであり、最初から完成されたチームを編成する必要はありません。

人材確保が困難な中堅・中小企業においては、必要なタイミングに必要な人材を最低限投入する。役割を果たしたチームメンバーは随時現場に帰して、現場での活動リーダーとしてプロジェクトを推進させるようにすればよいでしょう。

では、どのような時期に、どのような資質を持った人材を投入すればよいのでしょうか。前回の事業創造型プロジェクトのステップにしたがって検討していきましょう。

このうち特に、第1・第2ステップと第3・第4ステップではプロジェクトチームを構成する人材のタイプが大きく異なります。各ステップにおいて最適な人材は次のとおりとなります。

第1ステップ:プロジェクトの前提条件の整理

このステップにおいてまず必要とされるのは、経営者あるいは経営陣に代表される俯瞰的・長期的な視点を持つチームリーダーと、適切な助言が可能な高い専門性を持つ人材です。後者は外部の専門家を活用しても良いでしょう。
社内に調査・分析が得意なスタッフがいれば、少人数で結構ですので加えておかれると前提条件の整理に好都合です。
このステップではチームの人員数はチームリーダー1名と専門家1名、スタッフ数名程度の小規模な構成が経験上望ましいと思われます。

第2ステップ:プロジェクトのアウトラインの策定

プロジェクトの対象範囲や推進方針を検討していくステップです。チームメンバーとしては、チームリーダーを補佐するための部課長クラスのサブリーダー、企画部門あるいは営業や製造の現場での若手で、積極的に新しいことに取り組む起業家的精神を持ったメンバーを選抜します。
同時に、自社で実現可能かどうかを判断するために、プロジェクトの対象となる部門での実務担当者が加わる必要があります。役職的には管理職ではなく、若手から中堅クラスで部門の実務を中心的に推進している人材が適任です。

これらの新規メンバーに共通して必要な資質はコミュニケーション能力です。それぞれ立場の異なるメンバーがチームとして集結するため、チーム内でのコミュニケーションが重要になってくるためです。また、プロジェクトが進展するにつれて、関連する社内外の関係者との折衝や調整が不可欠となってくる点からサブリーダーには縦方向でのコミュニケーション能力も重要です。
チームリーダーは、実務メンバーが出身部門の利益代弁者になってしまうことや、専門家が細かな部分にこだわりすぎてプロジェクトの進展を妨げるというようなことが発生しないよう、強いリーダーシップを発揮することが求められます。

第3ステップ:プロジェクト活動の明確化と具体的推進体制の決定

このステップで、プロジェクトチームはその構成を大きく変更させる必要があります。
このステップからはプロジェクトを実際の業務レベルにまでブレイクダウンし、各業務に担当者を任命し、計画・実行・管理というサイクルにのせていく必要が生じます。このため、指示命令ならびに管理が職責として可能な人材として、対象部門の管理職クラスの人材をプロジェクトチームの中心メンバーとして任命します。必要とされる資質が業務完遂能力であることはいうまでもありません。求められる作業は、推進計画を詳細に立案し、作業ごとに担当者を選任、部門ごとでの進ちょくの管理です。

実際に業務として取り組む部門の管理者は、必ずしもプロジェクトに好意的とは限りません。現状での業務のうえにさらに新たな取り組みが発生することによる人員不足や効率低下を理由に、プロジェクトに対して否定的な態度をとる管理者も見受けられます。これを払拭するために、リーダーはプロジェクトが企業として優先して取組むべき重要課題であることを全社的に表明し、サブリーダーは各部門の同意を取り付けていくことが求められます。  なお、このステップに入ると第2ステップまでのメンバーは、専門家のみをオブザーバーとして残し、それぞれの現場に戻ってプロジェクト進行のための実務に従事します。

第4ステップ:プロジェクトの実行

プロジェクトチームが策定した具体的な活動を対象部門の担当者が実行していくステップです。各部門において実務担当者が中心となってプロジェクトを推進させていきます。全体の進ちょく状況は各部門の責任者で構成されるメンバーからプロジェクトチームに集約、チームリーダーはその内容を把握すると共に全社的にも公開し、成果達成に向けての士気を向上させていく必要があります。

ステップ主たる活動内容求められる能力・資質
リーダー・サブリーダー主要メンバー
第1ステッププロジェクトの
前提条件の整理
俯瞰的・長期的視点若手+
専門家
高い専門性(外部可)
第2ステッププロジェクトの
アウトラインの策定
チーム内を統括する
強いリーダーシップ
中堅社員起業家的精神
実務に対する知識
第3ステッププロジェクト活動の明確化と
具体的推進体制の決定
チームに対する管理・統括
全社的な意思表示
管理職業務完遂能力
部門管理能力
第4ステッププロジェクトの実行全社的な士気向上全社員業務完遂能力
部門管理能力