ニッチ市場を作り出す為の商品・サービスの考え方

なぜニッチ(隙間)市場を狙わなければいけないのか

企業が市場で存在感ある地位を獲得するためには、自社独自の商品やサービスを持つ必要があります。皆さんの会社でも当然、常日頃から新商品や新サービスの検討をされているものと思います。しかし、その際に次のような間違った考え方をしていないでしょうか。

『商品やサービスの内容が先行他社より優れていれば、顧客は理解し採用してくれる』
これはまったくの誤解です。例えば性能が3倍、価格が1/3というような、圧倒的な違いがあるものならば別ですが、少々従来のものよりも内容が良くとも、同じ顧客層からみれば二番煎じの模倣品にしか見えません。

また、大手企業が参入する規模の大きな市場では、すべての機能やサービスを標準仕様として組み込んでいくコモディティ(標準)化と、低価格化によるコスト競争が同時に進み、結局は資本力と販売力の勝負になってしまいます。
中堅・中小企業の皆さんが新商品・新サービスを企画する際にはこの2つのポイント、

  1. 先行他社と同じ顧客層に同じ切り口でのアプローチを行わない
  2. 大手が参入している(あるいは参入してくると予想される)市場は避ける
という考え方、大手が参入してこない比較的規模の小さな顧客層向けに、先行他社とは異なる切り口での新商品・新サービスを展開するという『ニッチ市場戦略』が必要となってきます。

ニッチ市場はどこに見つければよいのか

では、魅力あるニッチ市場とはどのようなものでしょうか。
筆者が新商品や新サービスの企画の現場でよく見かけるのが、ニッチ=マニアという考え方です。確かにどのような市場でもマニアと呼ばれる顧客層は一定する存在しますし、彼らは価格が高くとも気に入れば採用してくれるでしょう。しかしマニア向けのビジネスは、彼らに行き渡ってしまえば終わってしまいます。ニッチ市場戦略を採りながら企業の成長を目指すのであれば、この考え方は決してお勧めできるものではありません。

ニッチ市場を探索する際の基本は、『成長市場の周辺に探す』ということです。
成長している市場の周辺には必ず、次のような比較的小さな産業や顧客層が複数現れてきます。

  1. 市場の成長を支えるために必要とされる、設備・資材・加工・代行などの産業
  2. 成長市場が発生したことでビジネスのやり方を変えなければならない産業
  3. コモディティ品では満足できない高品質・高機能を求める顧客層
  4. コモディティ品ほどの品質や機能を求めない顧客層
このような産業や顧客層をターゲットとして、自社の強みを提案する。これがニッチ市場を獲得するための商品・サービス開発の基本となります。

商品・サービス開発の基本は3つのステップで行う!

成長市場の周辺に魅力ある産業や市場が発見できたならば、次は具体的な商品・サービスの企画を考えていくこととなります。
既存市場向けの企画ならば、実際の顧客にアンケートやインタビューを行い、ニーズを発掘するという「ニーズ対応型」の開発でよいでしょう。しかし、新たなニッチ市場を創造しようとする場合は、企業側から新しい考え方や視点に基づく企画を、商品やサービスの形で提案していく「ニーズ創出型」でなければなりません。
次に挙げる3つのステップを通じて、ニーズ創出型の商品・サービスを企画し、存在感ある、ニッチ市場でのトップ企業に生まれ変わりましょう。

STEP1:ターゲット市場の顧客プロフィールを検討する
図1:バリューチェーンと消費チェーン

まずビジネスの対象となる顧客の姿を明確化する必要があります。

生産財(BtoB:法人向け)ビジネスの場合

ターゲット市場を業種や業態でとらえるという考え方が一般的ですが、それでは自社だけが発見・創造する切り口になりません。次のような観点から、新たな市場が考えられないか検討してみましょう。

  1. 規模: 対象顧客の生産能力(出荷量)や従業員数、顧客数、事業所数など。同じ業界でも取引先が100件のところと10,000件のところではニーズが異なるはず。
  2. 地理: 地域的なもの以外に温度や湿度などの条件、交通アクセス、所在地の文化水準などが切り口として考えられます。
  3. 業務: 顧客の業務プロセスのタイプや、求められている品質水準などにより、同じ業界でも異なるニーズを持つ顧客層が発見できます。図の上段のバリューチェーンを参考に検討してみてください。
消費財(BtoC:消費者向け)ビジネスの場合

消費財では現在市場にある商品やサービスに「漠然とした不満」を感じている層を検討していきます。年齢や性別、職業、年収などの切り口でとらえるのが一般的ですが、それプラスアルファで次のような観点も取り入れるとよいでしょう。

  1. 心理: 品質や価格面で満たされていない層はないか。一般より保守的や新規性を好むなどでコモディティ商品の対象外になっている層はいないか。環境志向のような生活信条が突出している層はないか。商品やサービスを選択する際の銘柄や店舗に不足を感じている層は必ず存在します。 また、さらには実際に店頭などで複数の候補があるときの心理にも注目してください。量(ロット)、納期、価格帯、扱っている店舗など、好みの中から絞り込む際に思い通りにならないとストレスを感じている消費者はいないでしょうか。
  2. 購買: 図の下段の消費チェーンを見て下さい(図参照)。一連の消費活動の中に不満を感じている消費者層を見つけられないでしょうか。特に利便性や企業側(小売店ならびにメーカー)とのコミュニケーションの齟齬などは不満足感が生まれ易いポイントです。
  3. 地理: 本格的なガーデニングは一戸建てでは可能だがマンションでは無理というように、都市部と郊外での居住条件の異なりや、気候、交通アクセス、地域文化・習俗なども検討対象です。
STEP2:基本コンセプトを固める

ターゲットの姿が明確化できたならば、次にターゲットが抱えるウォンツ(潜在的なニーズ)は何かをもとに基本コンセプトを固めていきます。
 ニッチ市場での商品やサービスの基本条件は「他では手に入らない」ということです。つまり、既に市場にある商品やサービスでは叶えられておらず、ターゲット自身もどのように解決すれば良いのかについて正解といえるものを見つけていない潜在的なニーズ=ウォンツ(欲求)を満たす具体策を提示できるかどうかが成功のカギとなります。

生産財

ターゲットは企業ですので従来の商品やサービスでは達成できていない「利益(ベネフィット)」に注目します。ターゲットの業務の流れ=バリューチェーンのどこかに、従来品では不十分だったり未完成だったりする設備やサービスはないか、自社の技術やノウハウを持ち込めば生産性向上や在庫削減など具体的な業績効果が提供できないかを、社内で徹底的に議論しましょう。

消費財

ターゲットのライフスタイルの進化に既存の商品・サービスや消費チェーンがついてきていない分野はないか、ターゲットの自己主張・自己表現の欲求に対応しきれていない分野はないかというように、ターゲットに関する徹底した観察から可能性を検討していくことが望ましいでしょう。

STEP3:商品・サービスを具体的に企画する

ウォンツが明確になったならば、いよいよ商品・サービスの企画を検討します。
商品やサービスの企画においては、活用する技術やノウハウ、設計品質、使用する原材料や部材など、商品やサービスそのものの機能・特性に関する議論が重要であることは言うまでもありません。しかし、ニッチ市場を創造するという観点では、商品やサービスに関して付随する次の4つの要素が重要になります。

差別化の基本条件のクリア

次の3つのポイントが実現できているかどうかを企画段階で確認検討してください。

コピー&ネーミング

商品やサービスが提供する機能や特徴を明確に表現し、ターゲットの何に役立ちどのような効果を与えるのかが一瞬で理解できるキャッチコピーを検討します。このキャッチコピーは商品・サービスの開発コンセプトそのものです。ニッチ市場向けの商品・サービスの基本は「今まで無かった、これができるモノ」という特定ターゲットに焦点をあわせた絞込みです。あれもできる、これもできるでは既存のコモディティ品と同じです。
コピーがまとまったならば、次に仮にでも構わないので商品名やサービス名をつけます。このネーミングにおいても、特徴や機能を一言で言い表すようなものにして下さい。名前をつけることには、社内的にも「従来のものとは異なる」「改良ではなく新規開発である」という意識が生まれる効果があります。

パッケージング

ターゲットのプロフィールやニーズに合わせた、商品ラインナップやサービスメニューなどの品揃えを検討し、価格を設定していきます。ベースとなる商品・サービスにオプションの組み合わせで検討すると良いでしょう。
価格に関しては、市場で自社が評価されたいイメージを前提に、ターゲットのタイプ(品質重視か価格優先か)、コモディティ品(従来市場の売れ筋商品)の価格などを参考にして最終売価を設定し、その範囲での生産や提供コストが可能かを何度も検討します。
コストの積み上げだけで価格設定すること、従来品の価格との競争ばかりを考えコストを無視することは、両方とも避けなければならないことです。

デザイン&ラッピング

どれほど優れた品質や機能、サービス内容であっても、使い勝手や見た目、提供される店舗の外観などはターゲットの採用決定に大きく影響を及ぼします。試作品やテストモデルが完成しても、この点をなおざりにして慌てて市場投入しないように。中身がよくても見栄えが悪いものは売れません。特に消費財では、少々予算がかかっても外部のプロダクト・デザインや店舗デザインの専門家の手を借りるべきです。

生産財においても、開発したものをいきなり市場投入するのは危険です。特に今まで自社商品の開発経験の少ない下請企業などは、必ず開発工程を何段階かに分けて、各段階で専門家や取引先などに評価してもらい、修正と改良を継続的に行って最終商品にまで洗練化させていく「ラピッド・プロトタイピング」という手法をとることをお薦めします。

ニッチ市場は目の前にいくらでも存在する

従来の業界での常識にしがみついているかぎりニッチ市場は発見できません。では、ビジネス書や講座などで勉強すれば見つかるでしょうか。答えはやはりNoです。 ニッチ市場とは、誰もまだ気づいていないだけで、目の前には存在している市場のことです。これを発見するためには、目の前にいる顧客や取引業者などの変化の本質を、先入観を持たず、ゼロベースで検討しなおす姿勢を持つことで十分です。チャンスはすべての企業の前に横たわっています。